


見慣れた街が、知らない街になっていた。
ローカル私鉄の小さな駅前は、スーパーが取り壊され、かつてそこにスーパーがあったとは思えないほど小さな駅前広場になっていた。
ピンクと肌色とクリーム色を混ぜたような電車は、オレンジ色に塗り替えられ、10分ほど小さな車両に揺られて辿り着くこの街一番の繁華街は、見た目は綺麗になってはいるけれど、寂れた印象は否めない。
早起きした夏休み、ベランダから始発電車を見下ろしながら、一日が始まることに興奮した記憶は、真実なのか、それとも僕が勝手に作り上げた幻想なのか。
今となっては、もう分からない。
あの日の僕は、何の疑問もなく幸福だった。
それはたぶん、事実なんだろう。

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