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しゃぼんだま

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どこから飛んできたのか、しゃぼんだまが一つ。

風にのって、揺れる。

すぐに弾ける儚さが魅力のはずなのに、どこまでも飛び続けた。

周囲を見ても、誰が作ったのか、分からなかった。


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Far Away From Man

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少し前、あまりの労働に疲弊したことがあった。

一部上場企業の広報部にいる矜恃は、自分の会社が俗に言う「ブラック企業」だと疑うこともせず、ただ擦り切れるように働いた。

繁忙期だから仕方ないと思っていた。

24時間のうち、24時間、オフィスにいた。

応接室や会議室の床に横になって眠り、食事は毎回、会社の近くにある牛丼屋だった。

何日も風呂に入れず、無意識に噛んでいた親指の爪が変形した。

そうしながら、キャンペーンのアートディレクションからDTPまでこなした。

代理店の営業が持ってくる手みやげは、どれもドリンク剤だった。

疑うことなく、会社のために働いていると信じていた。

僕はまだ、若かった。

やがて右手が動かなくなった。

動くのだが、ほんの0コンマ数秒のタイムラグが出るようになった。

刹那の誤差が、苛立ちを連れてきた。

文章を理解することが難解になり、作業の効率が落ちた。

牛丼の味が分からなくなった。

おかしな耳鳴りが続いた。耳鳴りというより、頭の中が鳴った。

一人で作業をしたり思考する時は、iPodで爆音の音楽を流してその音を消さないと、コンセントレーションが続かなかった。

それでも働いた。

繁忙期が終わった瞬間、毎年ある筈の達成感を感じなかった。

何の感慨もなかった。

あれほど眠りたかった筈なのに、ベッドに横になっても、まったく睡魔はこなかった。

この時になって初めて、自分の身体がおかしいことに気づいた。

病院に行こうにも、何科に行けば良いのか分からなかった。

困り果て、医者の従兄弟に助けを求めた。

すぐに来いと言われた。

従兄弟は精神科医で、よく分からないクスリと一緒に、休職に必要な診断書をくれた。

会社に診断書を出すと、クビだと告げられた。

相手は単なる人事課長だったが、その場でクビだと言い渡された。

人事課長は、僕の上司と対立する派閥にいた。

別に良いですけど、訴訟を起こしますからと告げた。

泣き寝入りするだろうと思い込んでいた課長の表情が、少しだけ歪んだのが見えたが、ええよ、と彼は言った。

会社都合じゃなく、自己都合だからなと、課長は笑った。

東京本社に勤務していた上司に報告した。

あいつに解雇の権限なんてない、すぐに休みなさいと、上司は言ってくれた。

悪かったと、何も悪くないのに、電話の向こうで上司は謝ってくれた。

人事課長は三ヶ月以内に降格させるし、半年以内に辞めさせる。仕事に復帰する時には、もういないから、今は休めと言ってくれた。

僕は荷物をまとめて、実家に帰った。

病院とプールと家を循環するだけの、退屈だが規則正しい毎日を送った。

すぐに右手は動くようになった。

でも耳鳴りと味覚は治らなかった。

何もやる気が起きなかった。

何日かして、上司から荷物が届いた。

当時発売されたばかりの、Canon EOS 20Dとシグマのズームレンズだった。

僕は写真を趣味にし始めたばかりで、そのきっかけも上司が初代のキスデジを買ってくれたことだった。

せっかく休んでいるのだから、写真でも撮れと、短い手紙が添えられていた。

写真を撮る気力もなかったが、僕は海外に行くことにした。

場所はどこでも良かった。

写真が撮れるかどうかも分からなかった。

両親は心配したが、従兄弟は賛成してくれた。

僕はまず、ベトナムに出発した。

二ヶ月かけて、アジア、ヨーロッパ、ロシア、北米を歩いた。

二ヶ月間、iPod miniで、スウェーデンのバンドの曲を聴いた。

ずっと同じ曲だけを、エンドレスで聴いていた。

同じ曲だけを聴き続けるなんて、今になって思えば、どこか僕は病んでいたのだろう。

I think you have to take you're life more easy or else you'll die.

そのフレーズがたまらなく心地よかったのを覚えている。



今使っているiPod touchにも、その曲は入っている。

今日、久々に、聴いてみた。

歌詞カードがないので、正確な歌詞は分からないが、僕は「Far Away From Man」というタイトル(そしてサビのフレーズ)を、人間らしさを失うという意味でずっと捉えていた。

そう思い込んでいた。

今、明るい日差しの下で、イチゴとバナナのスムージーを飲みながら改めて歌詞を聴いてみると、それは「人間らしさを失う」という僕のイメージとは違って、「男らしさを失う。男らしさから遠ざかる」という意味に思えた。

あの日、僕は人間らしさを失っていた。

そして今、僕は男らしさを失っている気がする。

余談だが、上司の言葉通り、人事課長はすぐに過酷な現場に飛ばされた。もちろん降格だ。本社勤務で楽してきた人間に、現場が務まる訳もなく、おまけに人事課長時代の横領まで見つかって、半年を待たずして、解雇された。

当時の上司は、関連会社の社長になった。

僕の味覚は治ったが、耳鳴りは続いている。

クスリは、もうやめた。


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ONDC

大阪NKDS童貞クラブ

大阪の街とスナップ写真を愛する写真家集団。馴れ合いは好きだけど、基本的に馴れ合わない(馴れ合えない)ストイックな集団。入退会自由。意思表示として、このバナーを自分のブログやサイトに貼り付けるだけです。NKDSにも童貞にも深い意味はありませんが、そこに意味を求めたいロマンティックウォーリアーズです。

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プロフィール

まめ

Author:まめ


大袈裟に言えば、その刹那、僕の琴線に触れたものを、好きなカメラで撮ります。

誰のためでもなく、自分のためでもなく、ただ事実を残したいだけです。

写真は唯一の趣味かもしれません。

できれば、ずっと続けていきたいですが、飽きっぽいので、どうなるか分かりません。

ド素人の癖に、新車2台分くらいは、機材にお金をかけたので、もうちょっと楽しみたいです。

カメラのことは、よく分かりません。

コントラストの効いた写真が好きです。


使用機材

Ricoh GR DIGITAL I,II&III

OLYMPUS PEN E-P1
OLYMPUS OM-D E-M5 MarkII

Panasonic LUMIX GM1

Canon EOS 1Dx MarkII
Canon EOS 1Dx
Canon EOS 1D MarkIV
Canon EOS 1D MarkIII
Canon EOS 5D MarkIII
Canon EOS 5D MarkII
Canon EOS 7D
Canon EOS 40D
Canon EOS 20D

Fuji S5pro

Canon

EF24mm F1.4L USM
EF50mm F1.2L USM
EF85mm F1.2L II USM
EF100mm F2.8L macro IS USM
EF135mm F2L USM
EF200mm F2.8L II USM
EF14-40mm F4L USM
EF24-105mm F4L IS USM
EF70-200mm F4L USM
EE70-300mm F4-5.6L IS USM

Sigma

30mm F1.4 EX DC /HSM
18-200mm F3.5-6.3 DC
MACRO 50mm F2.8 EX DG
15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
12-24mm F4.5-5.6 EX DG ASPHERICAL /HSM

30mm F1.4 EX DC /HSM
(mount nikon for Fuji S5pro)


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